J-REITには様々な種類があります。それは事務所、商業施設、住居、ホテル、物流施設、ヘルスケアなどが挙げられます。
今回はその中で住居系リートの特徴について、賃料から見るNOI利回りの挙動について記述していきます。
住居系リートは賃料が固定化されやすい
昨今の住居系リートにおいて、いわば純利益を示すNOI利回りは5%付近で推移するものがほとんどです。これは取得した物件が比較的に新しいものを選んでいるという理由が強く作用しています。
このNOI利回りが上昇しづらいという部分には幾つかの理由はありますが、主には賃料が上げづらいという欠点から来るものが強いです。なぜなら住居における賃料の値上げとは困難を極めるからです。
まず家賃は毎月一定額を支払うことから固定費として計上されますが、この固定費が少し上がるだけで家計に大ダメージを負います。例えば一ヶ月で1000円上昇すれば年間で12000円の出費が上昇する事を想像して頂ければ、長期的な家計の圧迫に繋がることがよく分かるでしょう。そのため当然ながら居住者としては容易に賃料の値上げに応じることは出来ません。
そもそも住居における賃料の値上げとは、オーナー、居住者がともに合意した上で賃料の値上げが可能です。もしオーナーが一方的に上げるのであれば、居住者が泣き寝入りするか、又は出るとこに出て相談という流れになります。
またマンションタイプであれば当然ながら居住者の数は膨大となりますので、一件づつ合意を取りつつ家賃を上げるというコストは莫大です。合意する方も居れば拒否する方もいますので、その管理と人件費は非常に掛かります。
そのため賃料の値上げについてはオーナーにとっても非常にリスクが高く、また困難な作業でもめる事が必須となることは容易に想像付くでしょう。
賃料の値上げについては正当な理由が無ければならない
賃上げは正当な理由を付ける必要があります。その理由付けについては物件によって設備や近隣の状況が変わるため様々なものが考えられますが、良い物件に関しては固定資産税の支払いが増加したことを理由とする場合があります。
これは路線価、つまり地価が上昇して固定資産税の支払いが増加し、設備管理等の運用が厳しくなり、そのコストによる利益の減少を緩和するため賃上げという手段に走ります。
ただしこと不動産については、経年劣化による減価償却という考えが付きまとう事があり、これは物件と設備にそれぞれの法定耐用年数などから加味した上での計算もあるので、非常に見えづらい部分も存在します。
予め考慮された上での賃料設定がされていれば問題は少なくなりますが、想定以上に固定資産税や設備維持に費用が掛かることになれば、賃料の値上げという手段が行われる可能性が高くなります。
この様な理由もあって、NOI利回りは動きづらい
ここまでは賃料の値上げについて記述してきましたが、逆に賃料の値下げを行う場合ついては、オーナーと居住者の立場が逆転するケースが多いでしょう。
ただし居住者がその行動を起こすケースは少なく、これは下げるための理由に足る証拠を出す時間が非常に掛かることも挙げられます。つまりコスパが非常に悪いです。そしてオーナーも当然ながら賃下げは良しとしません。
これらの理由もあって賃料は固定化されやすく、NOI利回りの変動も限定的になる部分があります。
ちなみに他のオフィス系、商業系は契約の相手方が企業、法人であることから全く異なる属性を持つため、この住居型の特性には当てはまりづらい所があります。
NOI利回りが変動し続けるケースは注意
NOI利回りが上下に変動し続けるケースは注意が必要です。何らかの要因によって収益が変化し続けているという事に他ならないからです。
例えばNOI利回りが下落を続けるケースにおいては、空室の増加や、空室を埋めることが出来ていない、維持費や管理費が掛かり過ぎている等が考えられます。
ただこれはケースによって様々であるため一概にとは言えません。物件の買収によって変動する部分もあります。
取得する物件によって異なる部分はありますが、おおよそが築年数によってNOI利回りが変わってきます。新しい建物ほどNOI利回りは低くなりますが、逆に古い建物ほどNOI利回りが高くなるという特性を持ちます。
そのため取得する物件によってNOI利回りが変動するところもあり、その見極めは困難を極めます。しかし全リートは決算報告書をweb上の公開していますので、NOI利回りが変化した理由について探ることが出来ますので、時には状況を把握していくことも必要です。