リートの中で一番有名と言っても過言ではない日本ビルファンド投資法人【8951】は、その資産規模の巨大さから昔から注目を集めています。また配当(分配金)の利回りは過去より高くはない値で推移している銘柄です。
では早速内容を記載していきますが、情報については2018年10月1日時点でのデータとなります。
■概要
2001年にJ-REITとして初めて上場した最も古く存在するリートの一つで、オフィス特化型となります。そして資産規模は全リート中で1位となっており、その額は1兆円を超えていることから超巨大リートと言えるでしょう。。また格付けとしても各所から高い評価を取得しており、信頼性は抜群の状態です。
そしてスポンサーはあの三井不動産であることから、非常に強大なバックが付いていると言えます。そのため上場より物件取得・仲介の6割が三井不動産グループによるものです。
財務についてもLTVのコントロールを40%付近に保っていること、また長期固定金利比率を90%付近で返済期限を分散して調達しているなど、財務基盤としては強固な体制を築いています。
なお日本銀行が6%を保有していることもあり、その資産規模と安定感に対しては信頼を得ているということの裏付けでもあるでしょう。
■各データから見る日本ビルファンド投資法人の状態
少しだけ各情報の補足すると、NOIに関しては賃料、つまり収入から実際に発生した管理費や固定資産税などの経費のみを控除したものです。つまり、純利益率のようなものと考えて下さい。
NAV倍率は純資産価値に対する投資口価格(株価)の割安度であり、 株式のPBRに近いものです。
それでは基本的な情報を見て行きましょう。
項目 | 情報 |
株価 | 652,000円 |
決算月 | 6月 / 12月 |
分配金利回り | 3.08% |
物件取得額合計 | 11,051億円 |
物件数 | 72棟 |
NAV倍率 | 1.22 |
NOI利回り | 4.45% |
有利子負債比率(LTV) | 40.9% |
含み損益率 | 11.49% |
構成 | 事務所主体型 |
格付 | JCR:AA+ S&P :A+ R&I:AA |
築年数 | 18.356 |
分配金は3.08%と低いですが、これは基準価格が高値となっていることが要因の一つとして挙げられます。ただ過去より分配金利回りが低いリートですので、分配金を積極的に狙う銘柄ではないと考えた方が良いでしょう。
また3つの機関から非常に高い格付けを取得しており、このリートの信頼性というものが非常に高いことが伺えます。
そして物件取得額は圧巻の11,051億円で、これは全リート中1位です。他リートでは10,000億円というのもあるため、今後は接戦となる可能性もあります。
NAV倍率は1.22と非常に高いため、投資口価格としては高い状態にあることが伺えます。NOI利回りは4.45%とそこそこといった所です。
含み損益率は11.49%と問題なく良い状態です。過去にはマイナスとなる程の低い年度がありましたが、改善されました。
そして有利子負債比率については40.9%であり、過去より40%付近を推移し続けていることから負債のコントロールが良く出来ています。築年数に関しては18.356年でそこまで高くはない印象です。
■各決算データと地域別の分散状態
期 | 第31期 (2016年12月) |
第32期 (2017年6月) |
第33期 (2017年12月) |
第34期 (2018年6月) |
営業収益(百万円) | 35849 | 36409 | 42125 | 36635 |
当期純利益(百万円) | 12520 | 13109 | 14682 | 14010 |
総資産(百万円) | 1030434 | 1023900 | 1013860 | 1020237 |
LTV(総資産有利子負債比率) (%) |
41.9 | 41.5 | 40.8 | 40.9 |
1口当たり分配金 | 8867 | 9129 | 9370 | 9650 |
一口当たりNAV(円) | 497513 | 505308 | 523821 | 537915 |
基本的には右肩上がりの推移であり、分配金も年々上昇しています。なお2017年12月の利益が上がっている理由としては、2物件を売却したためです。
物件については適宜売却してはいますが、並行して購入も行いその資産規模の拡大を随時上手く行っているという状態です。またLTVは40%付近を厳守しており、良い財務コントロールが行われています。
次は上位物件と地域別にどの様に分けられているか確認していきましょう。
順位 | 物件名称 | 取得価格 | 比率 | 用途 |
1位 | NBF大崎ビル | 667億円 | 6.03% | 事務所 |
2位 | 六本木ティーキューブ | 628億円 | 5.68% | 事務所 |
3位 | ゲートシティ大崎 | 573億円 | 5.18% | 事務所 |
4位 | 西新宿三井ビルディング | 452億円 | 4.09% | 事務所 |
5位 | セレスティン芝三井ビルディング | 420億円 | 3.80% | 事務所 |
東京 | 81.5% |
関東地区 | 6.9% |
中部・近畿地区 | 8.4% |
その他 | 3.2% |
保有する物件については巨額な取得価格となっており、一軒ごとの資産価値が膨大であることが伺えます。また東京に一極集中という印象を受けますが、これはオフィス主体型らしい構成と言えます。
当然ながら東京都の地価が非常に高いため、取得価格が大きいリートについては集中してしまう傾向にあります。
■分配金利回りは低く、価格が非常に高い状態
投資口価格が60万台と非常に高く、まず手を出すことは難しい価格であり、また全体的に高値となっている印象です。またこのリートについては、分配金はそこそこの額を受領し、運用の安定感を享受するという見方をすべきと個人的に思っています。
また日銀が保有する6%についても今後は減少することも視野に入れた方が良いと考えています。理由としては、昨今の日銀は出口戦略を探っていることから将来は売却の可能性もあるためです。
それ以外で日銀が追加購入をする未来を想定するのであれば、相当なリセッションが起こっている事態が考えられますので、その想定は低いと見た方がよいでしょう。
そして最後になりますが、日本ビルファンド投資法人はその利回りと価格の高さの関係から、投資元本が小さいのであれば他のリートを選考するなど、資産状況に応じて組み込みを考慮する必要があります。しかしもし安定感を得たいのであれば、このリートを選ぶというのも一つの手かもしれません。
■終わりに
投稿した全てのJ-REIT評価記事を以下に貼り付けておきますので、お時間がある時にご確認を頂ければ幸いです。
月並みはありますが、投資は政治・経済という不確定要素が伴うため、自己責任という表現になることをご容赦ください。