米国株に投資可能なETFは様々ありますが、VTは全世界に投資可能というこれまた非常に優れたものです。そのVTを日本円で購入可能な投資信託が、この全世界株式インデックス・ファンドとなります。
分配金(配当)は2%台後半と高く、基準価格については分散していることもあって利回りが抑えられていますが、その点も含めてこのブログ記事にて私的評価を記載していきます。またこの商品の名称を楽天VTとして記述いたします。
なおこの商品はつみたてNISA対象商品であり、また楽天証券ではiDeCoで購入可能という幅広い形で購入可能な商品です。
では内容を記載して行きましょう。なお、本記事の情報は2018年9月23日での情報となります。
楽天・全米株式インデックス・ファンド(VT)の商品概要
この楽天VTの一番の特徴としては、実際はただ米国ETFのVTを買い付けるだけのファンドという所です。これはバンガード社と楽天投信投資顧問が手を組んだ事によりリリースができた商品です。
また基本的な情報としては以下の通りとなります。
対象インデックス | FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス(円換算ベース) |
購入対象ETF | VT |
販売手数料 | ノーロード |
投資信託の分配金 | 今のところなし |
購入対象ETFの分配金 | VTでは2.92%の配当 |
信託報酬 | 0.2296% |
実質コスト | 約0.5% |
投資対象 | 全世界 |
構成銘柄 | 8073 |
対象インデックスは全世界の株式市場の値動きをとらえることを目的とした株価指数であり、その構成銘柄数はなんと8073銘柄。凄まじい数です。ただこの数は良く動くため、およそ8000付近を前後すると考えた方が良さそうです。そして円換算ベースのため、もちろん為替の影響を受けます。
そして米国株ETFを直に購入する場合はドル転と高い海外手数料を支払わなければならないため買い方を注意する必要があるのですが、この楽天VTはノーロード投資信託であるため購入時においては表面的ではありますが手数料が掛からないため、eMAXIS slimシリーズなど他のノーロード投資信託と比較的に自由に配分が可能とも言えます。
なお実質コストについて発表がありましたが、約0.5%という、信託報酬として設定されている0.2296%の2倍という高い数値となっていることが判明しました。主に足を引っ張ったところは購入手数料が多く掛かっていた部分になりますが、想像を超えて高くついたという印象です。致命的にリターンが損なわれるものではありませんが、来年はどのような値が発表されるか、その推移を注目するところです。
また2018年07月17日に決算がありましたが、その際に分配金は出ておりません。VTにて発生する2.92%近くの分配金から税金を除いた額が楽天VT内部で再投資される見込みではありますが、設定日が2017年9月29というとても若い商品であるため一回の決算しか通過しておらず、今後も課税繰り延べの観点から今後も出ないことを祈る必要があります。
構成銘柄とその他
まず構成国の上位10位を示します。
順位 | 国 | 比率 |
1 | 米国 | 53.4% |
2 | 日本 | 8.2% |
3 | 英国 | 5.9% |
4 | 中国 | 3.3% |
5 | フランス | 3.1% |
6 | カナダ | 3.1% |
7 | ドイツ | 2.9% |
8 | スイス | 2.3% |
9 | 豪州 | 2.3% |
10 | 韓国 | 1.6% |
- | その他 | 13.9% |
半数近く米国で占められており、その他は低い値で推移しています。VT自体が銘柄組み入れの動きがそこそこあるため、おおよそで先進国は80~88%付近、その他が新興国の動きになると考えられます。
続いて上位10銘柄です。
順位 | 銘柄 | 国・地域 | セクター | 割合 |
1 | アップル | 米国 | テクノロジー | 1.8% |
2 | マイクロソフト | 米国 | テクノロジー | 1.4% |
3 | アマゾン | 米国 | 消費者サービス | 1.3% |
4 | フェイスブック・クラスA | 米国 | テクノロジー | 0.9% |
5 | アルファベット・クラスC | 米国 | テクノロジー | 0.7% |
6 | JPモルガン・チェース | 米国 | 金融 | 0.7% |
7 | エクソンモービル | 米国 | 石油・ガス | 0.7% |
8 | ジョンソン&ジョンソン | 米国 | ヘルスケア | 0.6% |
9 | アルファベット・クラスA | 米国 | テクノロジー | 0.6% |
10 | テンセント | 中国 | テクノロジー | 0.6% |
元々の比率が米国多めであったこともあり、9銘柄が米国でそれ以外は中国のテンセントのみが食い込んできています。そして上位10銘柄だけ見ると非常にテクノロジーまみれに見受けられますが、次に示すセクター比率を見ると金融が非常に多いです。
続いてセクターです。
順位 | セクター | 比率 |
1 | 金融 | 21.8% |
2 | テクノロジー | 14.4% |
3 | 資本財 | 13.7% |
4 | 消費財 | 11.5% |
5 | 消費者サービス | 11.4% |
6 | ヘルスケア | 10.4% |
7 | 石油・ガス | 6.4% |
8 | 素材 | 4.9% |
9 | 公益 | 3.0% |
10 | 通信サービス | 2.5% |
セクター分類の上位としては金融が同様の21.8%と多めになっています。出来ればテクノロジーやその他セクターと比率のバランスが取れていれば好ましいですが、これに関しては致し方ありません。
また補足情報として、本商品である楽天VTと、実質的に買い付ける米国株ETFのVTの信託報酬と分配金としては以下の通りです。
楽天VT | 本家VT | |
信託報酬 | 0.2296% | 0.10% |
分配金利回り | ー | 2.92% |
楽天VTは多少コストは掛かりますが十分低く抑えられています。もちろんドル転できるのであればVTを購入した方が圧倒的に信託報酬を抑えることができるため安くはなります。ただ少々細かいですが楽天VTは米国ETFを経由している事から3重課税問題というものもあります。
これは「①米国以外の現地 → ②米国ETF → ③日本」と経由するため3重に課税がされてしまうという欠点を抱えているので、その点だけは同じ全世界に投資可能なeMAXIS Slim全世界株式(除く日本)に劣る部分ではあります。
ですがVTをドル転せずに日本円で購入でき、今後は分配金さえ出なければ配当再投資が効くところが、楽天VTの強みです。
楽天バンガードシリーズ一覧との比較
ファンド名 | 対象 ETF |
1年間 リターン |
信託報酬 | 純資産 |
楽天・全米株式 | VTI | ー | 0.1696% | 182.67億円 |
楽天・全世界株式 | VT | ー | 0.2296% | 119.77億円 |
楽天・米国高配当株式 | VYM | ー | 0.2096% | 12.22億円 |
楽天・新興国株式 | VWO | ー | 0.2696% | 8.26億円 |
赤字とハッチングにて示した部分が本商品となります。楽天バンガードシリーズはまだ1年経過していない商品ばかりであるため1年リターンは不明です。ですが上記全商品のリターンについては、後述いたします。
楽天・新興国株式に次いでの信託報酬になりますが、これ一本で全世界に株式投資が可能である利点を考えると、十分に安いと言えます。
楽天VTは純資産が約119億円と豊富であり、とても人気が高い状態です。流石に楽天VTIには純資産やリターンなどの点から劣るのは事実ですが、全世界に株式投資が可能であるという利点と、つみたてNISA、iDeCo共に購入可能であること、色々な情報網でVTの凄さが知れ渡ったなど、様々な要因から成り立っていると推測します。
このため償還の危険性は現在のところは無いとも言って良いでしょう。
楽天Vanguardシリーズに関わるETFと、S&P500とのリターン比較
楽天バンガードシリーズ自体は米国で販売されているETFを買い付けるだけのファンドであるため、それに関連するETFと商品の普及などから有名どころのETFを少しだけピックアップして、VT自体を比較していきましょう。
データについてはmyINDEXより取得しており、2018年6月末時点でのデータになります。
ETF | 投資信託 | 分配金 | 年率平均 | |||
1年 | 3年 | 5年 | 10年 | |||
VYM | 楽天・米国高配当株式 | 2.89% | 10.4 | 10.7 | 10.4 | 9.9 |
VTI | 楽天・全米株式 | 1.63% | 14.2 | 11.4 | 12.2 | 10.4 |
VT | 楽天・全世界株式 | 2.92% | 9.5 | 8.7 | 8.8 | 6.6 |
VWO | 楽天・新興国株式 | 2.60% | 5.1 | 7.5 | 4.9 | 2.5 |
S&P500 【IVV】 【VOO】 |
eMAXIS Slim S&P500等 | 1.82% | 16.2 | 12.5 | 13.1 | 10.7 |
VTはすべての期間においてVWOを除く全てにリターンで負けています。これに関しては全世界に分散して投資しているので当然と言えば当然です。
この記事を記述している時点で、世界では市場の強さが米国一強に近い状態となっています。そのため構成比率のうち米国は半分近くで、残りはそれ以外であるVTは分散が効いてリターンも限られてしまいます。
要はVTは平均的になることが余儀なくされてしまう運命に近いのが欠点ではあります。しかし米国以外などが経済的に変化があった場合にその威力を発揮する可能性があることは利点になるでしょう。
米国市場の強さがいつまで続くか分かりませんし、もしかするとある期間では米国市場から資金の流出が起こる可能性だってゼロではありません。また他の国々で良い方向へと経済の変化があった場合に、そのリターンを逃してしまうことだってあります。
そのような展開も考えられるため、投資対象国に対しても昨今では分散性が叫ばれる状態ですから、少しでも全世界に分散して投資しておくという考えで行くとVTは非常に強みを持つことでしょう。
ですので楽天VTについては、リターンが限られやすくなりがちですが、これ一つで全世界に分散投資できること、日本円で購入可能なこと、分配金が出なければ配当再投資が可能であり、そしてつみたてNISAで購入可能であること、楽天証券ではiDeCoで購入できるという点を含めて、紛れもなく優秀な商品であると言えます。
■終わりに
楽天バンガードシリーズを含めた、全ての投資信託の評価記事を以下に貼り付けておきますので、お時間がある時に見て頂ければ幸いです。
そして月並みではありますが、投資は政治・経済に大きく左右される先の見通しが極めて困難で混沌とした世界であるため、確証が得られません。そのため投資は自己責任でお願いしてしまうことをご容赦ください。