金融庁の金融審議会において、市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」が発表され、大きな話題となりました。
この資料の内容を拝見すると、基本的には金融面の話をベースとして、現状の社会における問題点を整理し、将来において想定される一部の懸念事項等について記載されています。また、それに対応するにはどの様にしていくべきかなども記載されており、非常に面白い内容です。
そして今回、理由は分かりませんが2000万円という数値に話題がフォーカスされて、年金制度が「問題視」されているようですね。金融庁とその他の方々はこの流れについては不本意であったのではないでしょうか。この資料の作成に関わった方々が不憫でなりません。
ですがこの件に関しては、恐らく多くの方は今更感が強いのではないでしょうか。確か2000~2008年頃であったと思いますが、この時既に年金を考慮しても老後には2000~3000万円が必要であるという話は出ていたという認識です。この内容については当時興味が無かったため詳細な試算等は知らないのですが、おおよその額は出ていたはずです。今は長寿化が更に進行したこと、少子化がかなりマズい方向に作用してきたことなど、現在とは条件が異なる部分はあるにせよ、です。
このため、当たり前のことを、何故いまさらになって、さも新しく出てきた事の様に報じられているのかについて、ちょっと判断が難しい所があります。
でも私がどうしても腑に落ちないのが、今回なぜか問題として挙げられている2000万円の金融資産を達成するために、その処方箋の一つとして挙げられているつみたてNISA、iDeCoの活用と、そして金融リテラシー向上の必要性についてピックアップされず、前面に出されないという事です。
なぜ金融庁の処方箋を取り上げないのだろうか
どちらにせよ、少子化が進行する上に高齢者が増加する状況では、あらゆる事象が厳しくなることは目に見えています。その状況では経済成長の減少が見込まれるため、当たり前のサービスが今後は利用できなくなる可能性が高いでしょう。
金融庁の資料においては、老後を少しでもまともに過ごすことを可能とするため、資産形成が必要であるというニュアンスの流れが記述されています。つまり日本の状況が芳しくない以上、成長性の高い国の経済力を享受するという手段が必要となるのです。
そのため税制的に優遇されているつみたてNISA、iDeCoを活用すれば、その成長を取り込んで利益とすることが可能になりますから、日本の老後事情に漂う閉塞した状況を多少なりにも打破することが出来るかもしれない、一種の処方箋となりうるパワーを持っていることにもなります。
言わば問題に対する対応策になるため、年金の問題はともかくとして、これがフォーカスされていない事実が誠に残念でならないのです。問題だけが一人歩きして、その解決策の一つがピックアップされない状況について、恐怖すら覚えます。
最後に-資料は一読すると面白いです
市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」については、一読しておくことをオススメします。
金融庁:金融審議会 「市場ワーキング・グループ」報告書 の公表について(外部リンク)
ちなみに問題の一つとなった「毎月5万円の赤字」という部分ですが、これは老齢夫婦における無職世帯の平均値であり、人によってブレが生じる領域ですが、この部分もきちんと認識しておいた方が良いでしょう。図の文字は潰れていて読み取りにくいですが、資金用途の内訳は重要だと考えています。特に個人的に悩んだのが、住居費と思われる記述と、夫婦という状況にです。
また今回ですが、ある意味、金融庁が出して下さった資料に平均値(基準値)を出していただいたことは、一定の効果があったのでは無いかと思います。もちろん難しい方向でメディアが取り上げ、政争のタネとして扱われてしまっている事は誠に残念ですが、広く認識された可能性があれば効果はあります。
そして一部人口から見る、つみたてNISAとiDeCoの比率はそれぞれ1%台という厳しい状況ですが、今回の騒動で少しでも注意喚起として、この人口が増加することを願うばかりです。