J-REITはいわば不動産となりますので、物件の購入・売却が適宜行われます。
もし物件の売却を行ったケースにおいて、その利益で新たな物件取得等を行わなかった場合には分配金として出す必要が生じますが、この理由については、J-REITは原則として内部留保が出来ない仕組みとなっていることが要因となります。(ただし、条件によって一時的な内部保留は可能です)
そして物件売却によって一期だけ分配金が多く出ますが、物件を手放した以上は未来の賃貸収入の減少が発生するため、次期以降の分配金が減少することもあるのです。
この一期だけ上昇した分配金によって、分配金利回りが多く見えてしまうというのがJ-REITの難しい所で、これによって個別銘柄に魅力を感じて購入したが、実は次の分配金は減少するという状況になる事があります。
この事象の例を示すと
ちなみに直近の決算でこのケースに該当したのが、サムティ・レジデンシャル投資法人です。このリートの分配金を推移で表すと、以下の通りとなります。
- 2019年1月期の実績:3076円
- 2019年7月期の予想:3722円(物件売却によって上昇)
- 2020年1月期の予想:2672円(賃料減少によるもの)
この通り、2019年7月期だけ上昇して分配金利回りが高くなりました。ですがその次期となる2020年1月期においては、物件が少なくなった影響で賃料減少が発生し、利益が少なくなったため分配金の減少が発生しています。
このように物件売却のみ行い、その利益で購入等を行わなかった場合は分配金の減少が発生する可能性が高いです。またこの現象によってサムティ・レジデンシャル投資法人は一時的に7%近くの分配金利回りがあるように見える状態となりました。
またこれは良く分からない現象ですが、その後にこの銘柄は値上がりが続いて分配金利回りが7%→6%近くへと変動しました。その先の分配金利回りの情報を織り込んでいるのかどうかは不明です。
物件売却自体は悪いものではない
物件売却自体は決して悪いものではありません。契約しているテナント、つまり企業などがとある理由で一斉に出て行く可能性もあって、それによる稼働率の減少を避ける事を目的とすることがあります。また老朽化や、何らかの地価下落のリスクを避けることもあります。
そのため物件売却は随時行うべきです。一時的に分配金利回りが上がる現象はJ-REITの難点であるということは事実ですが、その売却によって未来の利益に繋がる事もあるためです。
ちなみに少々考え方は異なりますが、類似するケースとして企業の個別株では記念配当や特別配当によって一時的に配当金利回りが上昇する場合があります。これは上場10周年記念や、創業20周年などのお祝い金のようなものです。
これによって本記事と同様の現象が起こるため、一時的な配当金利回り上昇はJ-REITだけの難点では無いことは事実ですが、ただし物件売却という頻度と内容の違いがあるという意味で、心に留めて置く必要があるでしょう。
回避する方法は決算資料を読む等で情報を集めることしかない
これを回避する方法は情報を集めること、これしかありません。多くは各投資法人のサイトにて分配金情報を閲覧するか、IRライブラリーのページに遷移して最新の決算説明会資料を開き、分配金予想のページを見る必要があります。
特にこの現象で影響が大きる可能性があるのは小型リートです。これは物件数が少ないことから、一つ一つの物件が持つ影響力が大きくなるためです。
逆に大型リートであればその影響は小さくなる可能性があります。これは物件数が多く一物件の影響力が少なくなるためです。ですが旗艦物件レベルを数件放出したり、大改革と言えてしまうような大量売却を行った場合は、この限りではないでしょう。
このため急激な分配金利回りの上昇については注意が必要です。つまりJ-REITの分配金利回りは情報収集が鍵になる部分があり、この点についてはJ-REIT投資の特殊な部分だと言えるでしょう。