投資信託やETFには株式や債券、現金などの保有資産の総額を示す純資産というものがありますが、これによってユーザがどれだけ資産を投入しているかを認識可能な数値の一つとなっています。
厳密には保有口数がその源泉となる数値になりますが、純資産が多ければ多い程人気があると言えます。例として純資産が10億円と100億円の2つのファンドであれば、100億円の方が多くユーザが付いていることが一目瞭然で分かるでしょう。
しかしこの純資産ですが、急激な変動、つまり増加や減少が起こった場合はファンドだけでなく市場まで影響を及ぼす、重要な数値となっています。
今回の記事は、一般的に投資信託を購入する上でそこまで意識する必要のないものですが、頭の片隅に入れておく程度の内容です。
■純資産の急激な変動によって流動性リスクが発生する
投資信託、ETFなどは、純資産の減少・増加によって市場で売買しなければなりません。そのため急激な純資産が発生すると、流動性リスクというものが前面に出てきます。なお、ここでの流動性リスクは株式市場にて売買が出来なくなるリスクです。
極端な例として、市場の冷え込みが起こりユーザが一気に投資信託の売却を行ったとしましょう。またそのファンドは小型株を20銘柄という非常に少ない数の売買を対象とする設定とします。
その売却分の資金を補填するために市場で保有株を売却する必要があるのですが、しかし小型株が故に市場の板が薄く、本来は10万株売却を行わなければならないが不要なストップ安に繋がり、1万株しか売却できないといった状態になります。
純資産が急激に流入した際は逆の現象が発生する訳ですが、このように純資産の急激な上昇は流動性リスクを伴うことが挙げられます。
■売買回転率も上がってしまう
純資産の増加・減少によって、ユーザに支払う資金を調達するためにファンド内部で銘柄の売買を行う訳ですが、極端な純資産の変動が起こったり、続いたりする場合は売買が多くなりコストが増加してしまいます。
これは信託報酬、隠れコストよってユーザが支払うものであり、特に資金を多く持つユーザがその負担を強いられるため歓迎されません。
■純資産の増加もリスクはある
特にアクティブファンドに影響する内容になりますが、銘柄の流動性を勘案して1つの銘柄は3%までの保有とする売買の方針を設定をしていたとしましょう。その場合は純資産の増加によってマズイことも起こり得ます。
純資産が増加することによって保有する枚数も極端に増えてしまうため、結果この3%という数字が適切で無くなってしまい、実際は2%の保有が流動性を考えると限界であるといった状態に陥ります。
その結果として、投資対象や方針の変更を余儀なくされてしまい、そのファンドの持ち味というのも損なわれる可能性もあることから、純資産の増加というものも考える所があります。
■ファンドによって方針が異なるため、一概に良し悪しは語れない
実際のところ、ファンドにより投資対象などが異なり、その他にも様々な要因がありますのでこのリスクを簡単に語ることは困難です。
純資産が増加することによってファンドの信託報酬も下がりますし、その結果として実質コストも緩和されますので、歓迎すべきことではあります。
しかし流動性リスクについては、投資対象が広いタイプはそのリスクが緩和されることはありますが、投資対象が極端に狭いファンドは特にそのリスクが存在するということを、忘れてはなりません。