私もNISA口座で保有している、各地の温泉旅館に投資可能な大江戸温泉リート投資法人【3472】の評価を記載していきます。
では早速内容を記載していきますが、情報については2018年8月12日時点でのデータとなります。
■概要
すかいらーくHDの優待拡大における騒動などでお馴染みのベインキャピタルが、大江戸温泉ホールディングスの買収を2015年に行いリートとして立ち上げるという皆の予想を裏切る形で登場した投資法人です。
温泉特化のホテル主体型リートであり、ポートフォリオの80%は温泉施設で構成されているのですが、このリートが立ち上がる前に温泉特化型のリートは大丈夫なのか?という懸念を持たれていた位でした。ですが現在のところは上手く運用できているようには見受けられます。
■各データから見る本リートの状態
ここから各情報を記載していきますが、データの多くは大江戸温泉リート投資法人か、J-REIT.COMより拝借しております。
少しだけ各情報の補足すると、NOIに関しては賃料、つまり収入から実際に発生した管理費や固定資産税などの経費のみを控除したものです。つまり、純利益率のようなものと考えて下さい。
NAV倍率は純資産価値に対する投資口価格(株価)の割安度であり、 株式のPBRに近いものです。
それでは基本的な情報を見て行きましょう。
項目 | 情報 |
投資口価格(株価) | 87,756円 |
決算月 | 5月/11月 |
分配金利回り | 5.59% |
物件取得額合計 | 367億円 |
物件数 | 14棟 |
NAV倍率 | 0.86 |
NOI利回り | 7.02% |
有利子負債比率(LTV) | 42.2% |
時価総額(百万円) | 20381 |
構成 | ホテル主体型 |
格付 | なし |
築年数 | 37.12 |
前期稼働率 | 85.3% |
分配金は5.59%と比較的に高く十分な水準です。物件取得額は367億円と小型であり体力は少ない方で、有利子負債比率は42.2%で平均値ではあります。
NAV倍率は0.86と低いことによりその人気の薄さが伺えます。実は上位3位に入るレベルで低く、もう少し高くても良いのではないかと思う反面、仕方がないとも感じるところではあります。
そして前期稼働率は悪くはありません。時期によっては観光シーズンを外れると50%~60%と低い値になるのですが、平均としてこの値であれば十分です。NOIは7.02%であり、これは他のホテル型リートと同じくらい高い値であることから上手く利益を稼いでるとは言えます。
しかし築年数は37.12と高めであり、老朽化などの問題から様々に問題を抱えるため20台が好ましい部分ではあります。温泉施設という観点からこの部分は仕方ないかなと考えるところですが、ここは不安要素として挙げられるでしょう。
次は各決算のデータです。
第1期 (2016年11月期) |
第2期 (2017年5月期) |
第3期 (2017年11月期) |
第4期 (2018年5月期) |
|
営業収益(百万円) | 507 | 1021 | 1032 | 1442 |
営業利益(百万円) | 266 | 547 | 519 | 734 |
経常利益(百万円) | 67 | 446 | 421 | 571 |
当期純利益(百万円) | 65 | 445 | 420 | 570 |
1口当たり分配金(円) | 376 | 2533 | 2392 | 2435 |
総資産額(百万円) | 30732 | 29440 | 29208 | 39875 |
純資産額(百万円) | 15818 | 16197 | 16171 | 21220 |
1口当たり純資産額(円) | 89775 | 91925 | 91777 | 90166 |
自己資本比率(%) | 51.5 | 55 | 55.4 | 53.2 |
上場日は2016年8月31日であるため、2016年は11月期の参考度は薄いかもしれません。
物件の取得がスローペースであるため綺麗な右肩上がりとはなっていませんが、徐々に営業利益を上げています。自己資本比率は欲を言えば60~70%台が欲しいですが、今のところは許容範囲内です。
次は上位物件と地域別にどの様に分けられているかを分けて見て行きましょう。
上位5物件
順位 | 物件名称 | 取得価格 | 比率 |
1位 | 大江戸温泉物語 レオマリゾート | 104億円 | 28.28% |
2位 | 鬼怒川観光ホテル | 39億円 | 10.54% |
3位 | 大江戸温泉物語 伊勢志摩 | 37億円 | 9.96% |
4位 | 大江戸温泉物語 あたみ | 30億円 | 8.17% |
5位 | 伊東ホテルニュー岡部 | 27億円 | 7.24% |
地域
地域 | 比率(%) |
東海 | 30.6 |
四国 | 28.3 |
関東 | 19.6 |
東北 | 6.2 |
近畿 | 5.7 |
北陸 | 5.2 |
九州 | 4.5 |
香川県にあるレオマリゾートが旗艦物件になり、その一件だけで四国が28.3%となっています。また関東と東海に集中はしているのですが、比較的に分散されている印象です。
またアセットタイプは100%の完全なホテル特化型となっています。
鑑定評価額に関しても下記の通り高く、価値が低く問題を抱える物件は少ないと見ています。
取得価格合計 | 36,705百万円 |
鑑定評価額合計 | 39,962百万円 |
■2018年5月期には株主優待が配布された
リート自体はあまり親和性が高くないということもあって株主優待が少ないのですが、本リートでは2018年5月期に株主優待の配布が決定されました。1枚につき1,000円相当の利用券になるのですが、今後も配布されるかどうかは今のところ未定です。
1枚につき1,000円相当の利用券 | |
5口以上10口未満の場合 | 利用券1枚 |
10口以上の場合 | 利用券2枚 |
ただし土・日・祝日を除く、平日のみでかつ以下の使用除外日を除く場合にのみ使用が可能です。
・【使用除外日】2018年8月13日から15日まで、2018年12月31日並びに2019年1月2日及び3日
なかなか制約が強く使いどころが難しい印象も受けますが、このような優待制度があります。
他のリートで配布される優待券は割に合わないものがあったりします。星野リートなども過去に株主優待を行っていたのですが、投資法人としての運用効率を上げるため途中で廃止するなど、リート界隈の株主優待は難しい環境にあります。
■お台場の大江戸温泉物語は未取得である
東京都など関東の首都圏にお住みの方はご存知が多いと考えますが、大江戸温泉と言えばお台場にある温泉施設の大江戸温泉物語を連想させるかと思います。
ですがこの物件は取得しておらず、投資法人の回答としては今後も取得する予定はないとの事であり理由については詳細に語られておりません。なお株主優待についても大江戸温泉物語で使用することは出来ません。
大江戸温泉物語を取得し、かつ株主優待が使用出来るようになれば結構な株主が付くとは思いますが、それを理解した上で取得していないということは何らかの重い理由があるのだと想像しています。
■利回りは高いが、このリートを購入するのは?
悪くはないですが、良いとも言えない非常に結論が難しいリートです。分配金利回りは非常に申し分がないのですが、価格がヨコヨコで上昇率も非常にマイルドであり、私が保有するリートの中でも含み益は低い方です。ただ含み損になっていない分は良い方とも言えます。
まず私が一番気になるはやはり価格です。NAV倍率は0.86であるように価格が低く、これが上がらなければ新規投資口発行により集金が効率的に行えなくなるため、結果として新規物件の取得にも影響が出ます。
また2018年は8月現在において物件の取得を行っておらず、今年は何も取得しないのであれば難しい見通しとなりそうですが、物件の補修や改修などで足元を固める方向に動くのであれば問題はないと考えるところがあります。そのため今後の動向が注目されるところではあります。
私としては分配金を良く頂けている好きなリートの一つであり、今後も保有し続けることを考えてはいるのですが、本リートを他の方にお勧めする際の表現としては、他の物件を主体に考えつつ大江戸温泉リートはサブで検討してみては如何でしょうか、と収めるところでしょう。
■終わりと注意
投稿した全てのJ-REIT評価記事を以下に貼り付けておきますので、お時間がある時にご確認を頂ければ幸いです。
月並みはありますが、投資は政治・経済という不確定要素が伴うため、自己責任という表現になることをご容赦ください。