楽天証券におけるiDeCoの商品に選択されている三菱UFJ DCバランス・イノベーション(KAKUSHIN)ですが、バランス(可変分配)型のファンドであり、中々に面白い商品であるため私的評価を記事にすることとしました。
早速内容を記載して行きますが、注意事項として本記事の情報の多くは2018年8月15日での情報となります。
■三菱UFJ DCバランス・イノベーション(KAKUSHIN)の商品概要
使用するインデックスは複合型であり、どれも実績が高く良いものばかりです。
- 国内株式:TOPIX
- 先進国株式:MSCI Kokusai index
- 国内債券:NOMURA-BPI総合
- 先進国債券:FTSE世界国際インデックス(除く日本、円ヘッジ、円ベース)
- MMF
そしてこの商品の一番面白い部分になりますが、バランスファンドでありながら、その比率を市場の環境によって変化させていくというものです。これは資産分配可変型と呼ばれるのですが、そのイメージについては下図の通りです。
出典:三菱UFJ DCバランス・イノベーション 交付目論見書
バランスの閾値を変更することで市場に対応するというのが、この商品の非常に面白い所です。そのため場合によっては株式が極端に低くなる事も考えられます。
実質的なところはアクティブファンドに近いような気はするのですが、大枠となるバランスのスレッショルドを可変させるという考えが少し面白いのかなとは見ています。実際にどの様に運用を推移させているのかは後述します。
なお2018年03月26日に決算がありましたが、その際に分配金は出ておらずファンド内に再投資されています。その再投資された額は以下の通りとなります。これは1万口あたりの分配となります。
出典:三菱UFJ DCバランス・イノベーション 運用報告書
約9.94%近くの分配金が再投資されてはいるのですが、注意事項として設定日となる2014年5月30日から積み上げられた分配金が再投資されており、バランスファンド特有のリバランス等により4年間での売買差損益と配当金が積み上げられて、それが9.94%となっているというイメージです。
■楽天iDeCoのバランス商品との比較
商品名 | リターン | ||||
6ヵ月 | 1年 | 3年 | 5年 | 信託報酬 | |
三井住友・DC世界バランスファンド(動的配分型) | -12.04% | -5.28% | ー | ー | 1.2856% |
三菱UFJ DCバランス・イノベーション(KAKUSHIN) | -4.5% | 3.05% | 1.57% | ー | 0.6480% |
投資のソムリエ<DC年金> | -1.63% | 2.24% | 1.4% | ー | 1.1880% |
セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド | -1.35% | 4.9% | 1.86% | 6.77% | 0.7100% |
楽天・インデックス・バランス(DC年金) | ー | ー | ー | ー | 0.2078% |
赤字とハッチングにて示した部分が本商品となります。1年リターンでは3.05%であり、株式・債券のバランスが50:50のセゾンと比較すると低くはなっています。
なお信託報酬は0.648%であり、コストとしては少々高めだという感覚もありますが、リバランスとアクティブが合わさっている事を考えるとこれ位のコストも致し方ないとも思えます。なお直近での実質コストは0.671%となっており、実質コストは比較的に低く抑えられているとの印象を受けます。
設定日は2014年5月30日と古いのですが、純資産は48.66 億円となっています。また期間は無期限でありiDeCo対象商品であることから現在のところは数年と短いスパンで償還が起こる可能性は薄いとは見ています。
■この商品の運用はどの様な推移となっているか
私が今回この記事を作成するにあたって記述したかったことの一つです。その理由は、このバランスの皮を被ったアクティブファンドの運用はどの様に行っているか、そして市場の環境をどの様に見ているかを見ることが出来るためです。
それでは資産比率の推移を表にして見て行きましょう。
年月日 | 基準価格 | 沸落率 | 株式 | 株式先物 | 債券 | 債券先物 | 投資信託 |
2017年3月末 | 10733 | 0.3 | 32.8 | 0.9 | 62.8 | - | 0.4 |
2017年4月末 | 10786 | 0.8 | 30.5 | 1.1 | 54 | - | 0.4 |
2017年5月末 | 10884 | 1.7 | 29.8 | 0.7 | 64.7 | 0.1 | 0.4 |
2017年6月末 | 10938 | 2.3 | 35 | 0.8 | 51.2 | 0.1 | 0.4 |
2017年7月末 | 10952 | 2.4 | 39.6 | 0.7 | 57.1 | 0 | 0.5 |
2017年8月末 | 10984 | 2.7 | 31.4 | 1.2 | 63.3 | 0.2 | 0.4 |
2017年9月末 | 11146 | 4.2 | 41.6 | 1.3 | 54.7 | 0.1 | 0.5 |
2017年10月末 | 11340 | 6 | 42.3 | 1.2 | 53.2 | 0.1 | 0.5 |
2017年11月末 | 11404 | 6.6 | 42.7 | 1 | 53.3 | 0.1 | 0.5 |
2017年12月末 | 11504 | 7.5 | 40.4 | 0.9 | 55.9 | 0.1 | 0.5 |
2018年1月末 | 11515 | 7.6 | 40.7 | 0.4 | 55.5 | 0.1 | 0.5 |
2018年2月末 | 11315 | 5.8 | 31.5 | 0.9 | 62.6 | 0.2 | 0.3 |
2018年3月26日 | 11120 | 4 | 29.1 | 0.4 | 67 | 0.1 | 0.3 |
主には赤字に示した株式と債券の部分を見て頂くと分かりやすいと思います。2017年の末には株式を増やしてはいますが、2018年1月末には株式減少・債券増加となっています。
あと基準価格についても注目できるところがあります。2018年2月の金利上昇による市場の混乱があったにも関わらず、基準価格が翌月には-2~4%近くとそれ程に減らしているわけでもないため、債券によるクッションを生かして耐えていることから上手く運用できている部分もあるように見受けられます。
そして比較対象として難しいところはあるのですが、折角ですからあえて同じバランスファンドとして分類されているセゾン・バンガード・グローバルバランスファンドとこの直近の値動きを比較すると下記の通りとなっています。
銘柄 | 2/2 | 2/15 | 合計 |
KAKUSHIN | -0.27 | -3.21 | -2.94 |
セゾン | 1.56 | -3.9 | -5.46 |
この通りKAKUSHINは基準価格の減少を抑えています。
ただしセゾンについて長期で見た良い点をあえて挙げますと、2014年5月30日から両商品の価格を比較すると、セゾン26%上昇、KAKUSHIN12.24%上昇であるため、その点はセゾンが優秀です。
次は楽天証券での本商品の基準価格と、バランス(可変配分)での分類にて平均して比較したグラフです。
同じ分類ではアウトパフォームしており優秀であることが伺えます。これを見る限りはiDeCoに採択された理由も伺えます。
■このファンドをどの様に見て行くか
2018年2月に金利上昇に伴う市場の混乱が発生した訳ですが、それを受けてこのファンドは債券の比率を一気に増やしているようです。ただこのファンドのデータが2018年3月末までのデータしかないため直近は分かりません。
特に債券部分を良く高めているためリセッションには強そうな印象を受けますが、株式の比率が少なめに設定されているため利益を狙うには少し弱そうな部分がありますが、今後はその運用手腕が試される事でしょう。
私としてはもう少し様子を見たいとは考えていますが、今後この商品がどの様な値動きをするのかが楽しみではあります。
また、このファンドを見ることによって市場をどの様に見ていたかが分かるため、今後もチェックしていこうと考えています。
■終わりに
投資信託の評価記事一覧を以下に貼り付けておきますので、お時間がある時に見て頂ければ幸いです。
そして月並みではありますが、投資は政治・経済に大きく左右される先の見通しが極めて困難で混沌とした世界であるため、確証が得られません。そのため投資は自己責任でお願いしてしまうことをご容赦ください。