日本、欧米、米国などはリーマンショックにより、金融緩和へと舵を切りました。それによって債券の利回りは0%近くになりましたが、その副作用によって債券は購入する価値が無くなり、言ってしまえば腐りつつあるとも言えます。
これを打破するためには社会全体の財政健全化が必須条件ではあり、かつインフレが緩やかに起こり続けるような状況が望まれますが、それが上手くなされていないため、債券の金利を上げる事が叶わず、金融緩和を続けるしか方法がないのがジレンマではあります。
このため、債券の金利を制御して経済をコントロールする、各国の中央銀行が半ば機能しにくくなっているという事でもあります。つまり経済状況は混沌としつつあるという事です。
そんな状況の中で現代貨幣理論(MMT:Modern Monetary Theory)が出てきたわけですが、これは自国通貨の国債を発行してインフレレベルを調整していくことを主柱とするような理論ですが、これも考え方が様々あって簡単に纏められるようなものではなく、また条件なども複雑であるため、簡単に記述することができないものです。
でも、これがまた非常に面白い内容で、日本国の状況を指し示している訳です。中央銀行の出来る事が少なくなった現状で、それに対処する一つの方向性としての議論でもあるのが興味深い所です。ただしこの議論は貨幣価値を揺るがす猛毒でもあるので、注意が必要です。
MMTの議論の行く末を見守りたい
私が怖い所は、国債が機能しない社会が来た場合に、国債というアセットへの投資方針をどの様に決定して行けばよいか、分からなくなってしまう事です。
でもこれは半ば嘘を付いているかもしれません。何故かと言うと、日本は既に金融緩和によって日本国債への投資は難しいものとなっており、投資方針としては「投資しない方がマシ」というレベルとも言える可能性が高いためです。
そういう意味では米国国債はまだ健全なレベルであるとも言えます。金利が2%近くあるだけで羨ましい限りです。でも米国の借金は2018年から目に見えて増加しており、また更なる借金を続けるような政策を取っている事から、将来的に日本を後追いする可能性もあります。
そのため、国債に関わる議論って重要だと思うんです。言わば中央銀行の成す役割が変化したため、それに対応する議論が何かしらあっても良い。でもMMTについては、現状の経済にある問題点を解決に導くものとは言えません。ただしこの議論をベースにして、金利や債券が機能しなくなった際の経済の道筋を立てて行くものとして、活発に議論されるべきものだとも考えています。
そういう意味では、株式というのは金融緩和によってダイレクトに汚染されているワケではないため、健全なアセットとも言えるかもしれません。ただし、日本の株式については日銀のETF購入の影響もあり、MMTのような新しい経済理論が出るべき状況なのかもしれません。