日本株で高配当と言えば様々な銘柄がありますが、その中で70銘柄を詰め合わせたETFが上場インデックスファンドMSCI日本株高配当低ボラティリティ【1399】となります。なお愛称は上場高配当低ボラティリティです。
以下より内容を記載していきます。なお、本記事の情報は2018年12月20日時点での情報となります。
基本情報
対象インデックス | MSCIジャパンIMIカスタム 高流動性高利回り 低ボラティリティ指数 |
コード | 1399 |
構成銘柄数 | 117 |
分配金利回り | 約2.43% |
純資産 | 136億円 |
信託報酬 | 0.378% |
分配頻度(決算日) | 年4回(1、4、7、10の各8日) |
信託報酬は0.378%とそこそこの値に設定されており、日本株高配当ETFの中では高い部類の値となっています。また純資産については136億円とそれなりに資金は流入しています。
そして分配金利回りについては、2018年12月20日時点での市場の冷え込みを考慮して約2.43%であるため、高配当ETFとは名が付きますが、少々低めの配当金と言えます。
ただここまで分配金利回りが低いのは、信託報酬の高さ、ボラティリティ低めを目指していること、そしてこの指数は配当利回りが高い銀行株を排除していることなど、理由をピックアップすると主にこれらの要因が挙げられます。
なお分配頻度は年4回であり、米国企業のように短いスパンで貰えることが個人的には嬉しい点です。そして権利確定月は年に4回となっていますが、企業の決算が多く重なる4月・10月付近で分配金が高くなる形式です。
上位10銘柄
順位 | 銘柄 | 比率 |
1 | テクノプロ・ホールディングス | 1.07% |
2 | 東京建物 | 1.07% |
3 | 伊藤忠テクノソリューションズ | 1.07% |
4 | ヤフー | 1.04% |
5 | 沢井製薬 | 1.03% |
6 | トレンドマイクロ | 1.03% |
7 | ブリヂストン | 1.03% |
8 | 住友林業 | 1.03% |
9 | SCSK | 1.03% |
10 | アステラス製薬 | 1.03% |
かなり特殊な上位10銘柄であることから、この指数が相当特殊であることが伺えます。
そしてこの上位10銘柄ですが、次に示す通り高い頻度で入れ替わりが行われます。
これは直近の月次報告書から抽出しておりますが、毎月銘柄が変更されていることが分かります。1ヶ月経過しただけで上位10銘柄がほとんど入れ替わる動きをします。
このETFで適用している指数は年に4回の銘柄入れ替えがありますが、この3ヶ月間は非常に大きく入れ替えを行っているようです。詳しい理由は分かりませんが、恐らく一部銘柄の急落など市場の環境にもよると考えます。
そして、もちろんこの入れ替えはセクター構成にも影響を及ぼしています。
セクター構成
業種 | 比率 |
輸送用機器 | 9.64% |
電気機器 | 9.60% |
化学 | 7.89% |
情報・通信業 | 7.16% |
建設業 | 6.94% |
電気・ガス業 | 6.68% |
卸売業 | 6.61% |
不動産業 | 5.33% |
小売業 | 4.69% |
機械 | 4.59% |
一応直近のセクター構成を出してはいますが、あまり参考にしない方が良いかもしれません。何故なら前述の通り、銘柄が頻繁に入れ替わりますのでセクター構成も動きが激しいです。
一ヶ月経てば小売業が4%→7%という推移もあるため、かなり比率の変動があると考えて下さい。そのため直近ではアクティブファンドのような動きをしているようにも感じます。
この指数の特徴
このETFで使用する指数には以下の特徴が示されています。
MSCIジャパンIMIカスタム高流動性高利回り低ボラティリティ指数は、MSCI Inc.が開発した株式インデックスです。MSCIジャパンIMI指数※の構成銘柄のうち、金融関連銘柄および上場不動産投資信託証券を除く、一定の市場流動性を持ち配当利回りが比較的高い銘柄をユニバースとし、過去の値動きを数理モデルによって解析し、全体の値動きができるだけ抑えられるような投資比率に最適化した銘柄の組み合わせについてパフォーマンスを指数化したものです。
※MSCIジャパンIMI指数は、日本株式市場全体のパフォーマンスを計測するべく設計された指数であり、浮動株調整後の市場時価総額の大部分をカバーしています。
構成銘柄は毎年2月、5月、8月および11 月に見直しを行ないます。
引用:日興アセットマネジメント
一番の特徴は、金融関連銘柄とREITを抜いて、市場流動性が高く、配当利回りが高い銘柄から計算によって銘柄を選定するということです。
また前述でもありましたが、銘柄の見直しは年4回です。
売買回転率の情報がないため詳しい部分が見えてこないところではありますが、比較的に高頻度で見直しが入り、ダイナミックに銘柄を入れ替えるイメージが直近の銘柄構成にて見受けられます。
分配金の推移
決算日 | 10口あたり 基準価額 |
10口あたり 分配金額 |
2018年10月8日 | 1,7210円 | 160円10銭 |
2018年07月8日 | 1,6450円 | 20円10銭 |
2018年04月8日 | 1,7020円 | 170円10銭 |
2018年01月8日 | 1,8400円 | 20円10銭 |
このETFは10口からの購入となるため、全て10口あたりの値で表示しています。
個別株の多くの配当権利月は3月と9月となるため、その翌月の4月と10月はこのETFから頂ける分配金が高くなるイメージです。
日本株特化型の高配当系ETFとの比較(リターンとリスク)
他の日本株高配当系ETFをピックアップし、配当込みのトータルリターンと、リスクについて見て行きましょう。なおデータはmyINDEXより取得しており、2018年11月末時点でのデータとなります。
また下記のデータは年率平均であり、当然ながらその期間にマイナスやプラスになる年もある、つまりうねりを平均化したリターンとなります。もちろん今後はこのように推移するかは不明です。
ETF | リターン(年率) | ||
1年 | 3年 | 5年 | |
上場高配当低ボラティリティ | -6.8 | 5.8 | - |
上場高配当100 | -5.3 | 3.7 | 8.7 |
日経高配当株50 | -5.2 | - | - |
1年のリターンは大きくマイナスとなっているため他に負けていますが、3年リターンでは上場高配当よりアウトパフォームしています。
ここが少々面白い所で、今までのデータでは3年ほど保有していれば、分配金利回りの高い上場高配当100よりリターンを出せていたという点です。
また日経高配当株50はまだ若い商品であるため、3年以上のデータの無いことが悔やまれます。ですが長期的に見て行くうちにどの様に推移するかが注目といったところでしょう。
そして今回紹介するETFはその名に低ボラリティと名が付くため、折角ですからリスクについて確認して行きましょう。
ETF | リスク(年率) | ||
1年 | 3年 | 5年 | |
上場高配当低ボラティリティ | 12.6 | 13.5 | - |
上場高配当100 | 11.2 | 12.5 | 13.4 |
日経高配当株50 | 13.2 | - | - |
ちなみにリスクとはリターンのブレ幅の高さを意味します。リスクは少しばかり低ボラティリティとは意味が異なってしまいますが、参考程度に拝見してください。
しかし1年においては日経高配当株50より少しだけ低いですが、上場高配当100には負けています。
ただ上場高配当100は食料品やREITを多く含んでおり、他の日本株高配当系ETFとは構成にかなり違いがあることから、リスクについて参考にするのは難しい部分があるかもしれません。
総括
このETFの利点を挙げるとすれば、金融危機などに非常に弱い金融銘柄と、下がる時は極端に下がるREITが除外できる点にあると考えます。
弱点としては信託報酬の高さがネックであり、これは銘柄が高い頻度で入れ替わる事も影響しているように考えられ、つまり回転率によって信託報酬に影響が生じている部分でもあるでしょう。
そして分配金利回りが少しばかり低く、他の日本株高配当ETFと見劣りしてしまうことも少々難点だと言えます。
しかし個人的には金融銘柄を含まないセクター構成に魅力を感じるため、それなりの利点はあるのではないかと思っています。つまりクセは強いが保有するにはそれなりの利点はある、という所です。
ですがこのETFを高配当ポートフォリオの主力に設定するのではなく、サテライト感覚でサブで保有する位かなとは思っています。例えば野村高配当50や上場高配当100を主力としてリスク・リターンを取っていき、上場高配当低ボラティリティをサブとして添えるなどの構成です。
終わりに
他の高配当系ETFの記事もありますので、以下に一覧ページを貼り付けておきます。お時間のある時に閲覧して頂ければ幸いです。
また月並みではありますが、投資は政治・経済に大きく左右される先の見通しが極めて困難で混沌とした世界であるため、確証が得られません。そのため投資は自己責任でお願いしてしまうことをご容赦ください。