昨今は米国の経済成長が続いており、また金利も2%台に付けているという関係から、ドル高へと推移しています。この状況はとにかく米国が強いと言うべきか、または他の通貨が弱いと言うべきかは難しいことですが、一つ言えることは米国に資金が集まっており、かつ米ドルを好んで購入されているという事です。
でもこのドル高の傾向って、米国の輸出産業としては何らかの影響を生じ、企業によっては痛いダメージを負う事になる可能性もあります。輸出のプロセスにおいては他国の通貨を受領するワケですから、獲得できる外貨は少なくなり、結果として利益は減少します。
この状況が継続すると、輸出に頼る一部の米国企業としては何らかの対策を講じる必要が生じてしまうのですが、この対策の多くが痛みを伴うものになるため、非常に厄介です。
そして、その中でも私が注目している対策の一つとして、「工場を海外に移転する」という行為が挙げられます。
工場を海外に移転するのは対策として妥当だが、雇用に激痛が生じる
自国の通貨が他国と比較して高いため、労働力の安い海外や部品調達などを見越して海外に工場を移転するというのは、貨幣を稼ぐという観点では比較的に合理的な判断であると見る部分はあります。
ただし工場を移転するワケですから、そこで働いていた労働者の方々は職を失う事になります。これが大企業の工場となれば数千人規模になることが多くなりますから、その経済的な影響は少なからず生じます。
つまりその国と地域における雇用の空洞化が生じてしまうのが、工場移転の厄介な部分なのです。労働者は収入を失うわけですから、消費に影響が生じ、またローン等の支払いにも少なからず影響が生じます。
ですがこの海外への工場移転というものは、商品そのもののコモディティ化によって単価が下がることや、賃金の増加など、その他の要因でも起こり得ることではあるため特別な事ではないのですが、但し為替の影響によってそれが増加する可能性がある、と言うのが困りもの。
つまり、工場の海外移転によって経済成長している米国の雇用に空洞化が生じ、米国を全体で見た時に経済成長に陰りが生じてしまう危険性も存在する。という事になります。
このため、ドル高が長期に渡って継続した場合は、企業の生産活動において海外移転の動向を見る必要も生じてくるのかなとは考えています。つまり海外移転をした米国の企業が増加している傾向にある場合は、米国の雇用統計を見つつ、その状況を把握した方が良さそうです。
そして私個人の妄想としては、為替の変動と影響によって海外移転の様な雇用の変化が生じるため、経済サイクルという概念において、その影響が少なからず生じているのではないかと、考える所ではあります。