ここ1年程のJ-REIT市場には海外の資金が多く流入しており、そういった事もあって東証リート指数は上昇を続けています。
海外の買い越しについては3000億~4000億円近くとも言われ、J-REIT市場全体が13兆円ほどの時価総額を持つことを考えると、かなり大きな資金が流入しているとも言えます。
またJ-REITの売買代金については、その全体の7割近くが海外であるとの情報が東京証券取引所から出ました。そのため相当な海外の資金によってJ-REIT市場が活況に見えるようになっているのではないかと考えます。
東証リート指数は今や右肩上がりとなっている現状を鑑みるとJ-REIT市場が活況となっているとも言えますので、それは非常に好ましい事ではあるのですが、ただし忘れてはならないのが購入している方々がどの様なスタンスで購入しているのか、そしてその状況下において、想定される市場の空気と言うものを考える必要があります。
J-REITは妙味があるのか
ここは妄想ですとの前置きをしておく必要がありますが、海外の資金が流入したという事は何らかの妙味を感じて資金が流入した、この可能性が濃厚です。
これは米中貿易戦争、また米国債の金利上昇によって株式・債券市場が荒れる中、それに業績などの影響を受けにくいREIT市場は安定感があったことなどが囁かれており、このため要因は様々あると言えます。
ましてや日本は低金利政策となっており、銀行から資金を調達して物件を購入する選択肢があるJ-REITにとっては、非常に良い環境が続いている状態です。また東京オリンピックによる恩恵もあるでしょう。
そしてJ-REITは分配金利回りが十分に高く、東証リート指数のETFを購入すると約3%の分配金を得る事ができます。最近は値が上がって少しばかり低くなってしまいましたが、J-REIT全銘柄に分散投資でこの数値は十分とも言えます。
そもそも分配金利回りが高い理由は、不動産というリスクが高い商品であることだと考えてはいますが、それにしても個別銘柄で狙い撃ちすれば4~5%の分配金利回りを受ける事が可能ではありますので、十分に魅力的な数値をもつ銘柄を選択することも可能です。
また直近では不動産界隈で大きなショック等もないため、分配金利回りは安定しています。この数年間で安定して分配金を積み上げている個別銘柄が多数であることもあり、分配金も右肩上がりの市場であったとも言えます。
この様な背景もあってJ-REITは十分に妙味があるため、資金の流入が続いているのだとも考えられます。一部銘柄の値上がりだけでなく、分配金利回り自体も十分に魅力的ですから。
値が上がる事によって、情報は過熱する
東証リート指数が右肩上がりである現状で警戒を促す記事もあります。ですが「今J-REITの値が上がっている」等の情報が出回る量が多いのが現在の環境だと認識しています。
これは単純に見ればその通りであって事実ではありますが、これによってJ-REITの活況の報道がされて注目が集まり、購入する個人投資家の方も多い事でしょう。
もちろんこれは素晴らしい事ではありますが、その裏に潜む海外の資金が流入しているという情報が抜けたまま注目が集まる事もあり、つまりその背景の一端が見えにくいというのが厄介な所です。
そしてその情報が抜けたまま個人投資家の資金が流入したのであれば、もちろん値は上がる方向となりやすいでしょう。それに加えて海外の資金も流入して相乗効果になり、これもまた右肩上がりが続きます。
ですが購入時に妙味があって購入したのであれば、それから期間が経過して売却の値段に妙味が出てこれば売却するのが投資のセオリーですから、それを淡々と実行するのが海外投資家という事を事実として捉える必要があります。
そして、それがとある時期で実行された場合は、目も当てられない可能性になるということも忘れてはなりません。
NAV倍率が高いとは言い切れないが、より一層の注意が必要
J-REIT市場は小型市場です。これは東証全体で時価総額を比較するとその規模が分かるでしょう。
- 東証全体:629兆円
- J-REIT市場:13.5兆円
この通りJ-REIT市場は小さく、言ってしまえばある程度の資金で値が上がりやすいとも言えてしまう所もあります。ただ一つ一つの個別銘柄としては安いとは言えないのことも事実ではあります。
またJ-REIT市場ではNAV倍率が1.09と高すぎるとも言い切れない数値であり、2015年の1.5近くあった頃と比較してしまうとまだ低い方とも見て取れるでしょう。
ですが背景として海外の資金流入によって値が上がっているという事実もあり、そして報道が過熱すれば更に資金が集まり、ある一定の状況になった場合はどの様に海外資金が動くか予想が付かないため、我々はより一層の警戒を強める必要がある、そう言いたいのがこの記事の趣旨となります。
つまりJ-REIT市場が右肩上がりであるからと言って大量の資金を投入するというリスクは侵すべきではなく、慎重に投資することが重要です。